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6BQ5差動プッシュプルパワーアンプが一応の成功で問題なく使えることが分かったので、EL34でも同じ回路構成で組んでみることにした。

・差動プッシュプル出力回路(EL34は3極管接続)
・単管(6DJ8)初段回路
・電流伝送入力(IVC)

初段管は音質への影響が大きいので良いものを使いたいがWEは高価だ。C3gも使ってみたいがこれも入手しにくい。結局は使いやすい3極管で感度の良い6DJ8にした。双三極管なので一本で左右chを賄う。
EL34は6BQ5に比べてはるかにバイアスが深いので定電流回路にかかる電圧も必然的に高くなり損失も増えるからあまり深いバイアスにしたくない。プレート電流はEL34一本で65mA程度の控えめに設定した。

以前作ったEL34全段差動アンプを改造する。 初段とドライバ段はすべて撤去するが、電源トランスと出力トランス回りは流用するので作り変えるコストはあまりかからない。この際、ケースも捨てて、新しく木製シャシーにする。


■シミュレーション
入力無信号状態でのEL34のグリッド電圧を+9V(対GND)に設定した。この状態で60mA程度のプレート電流を流すと、EL34のグリッド電圧(対カソード)は-24Vくらいなので、カソード電圧(対GND)は+33V((対GND)になる。カソード電圧が高いほど定電流回路のトランジスタの損失は大きくなり、シミュレーションによると3.8Wくらいになる。放熱対策が必要だ。
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下はEL34のグリッド電圧の変化のシミュレーション結果。グリッド電圧はゼロより下がることはできないので、これ以上入力レベルを上げると歪む。
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■回路
EL34の定電流回路のトランジスタはコレクタ損失がある程度大きくとれるものを使う。hfeが100に満たないようなので、コレクタ電流が140mA流れることを考えるとベース電流は2mAくらい流すことが必要だ。ベース回路に手持ちの定電流ダイオード(4.7mA)を使った。
6DJ8の電源は安定化が必要なのでレギュレータを通す。電源トランスに0-70V(0.15A)の出力があるのでこれを整流して+90V程度の安定化電圧を得た。
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■基板
2SA606には放熱器を付けるのでその周りを避けるように部品を配置する。6DJ8は1本で左右CHを賄うので基板中心に配置した。他の部品もすべて左右対称に配置してみた。
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穴あき基板の銅箔ランド面に配線した。基板を固定した状態で線を引き出すことができるのでこの方法がやはり便利だ。ランド間の配線には7本撚り線を使う。
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■ケース構造
ホームセンターで白木集成材の板(20mm厚)を買ってきた。EL34のソケットの穴開けが大変だが、金属シャシーに比べればはるかに楽に加工ができるのは木製シャシーのメリットだ。部品や基板も木ネジで固定できる。

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■調整
無信号入力時のEL34のグリッド電圧が+9Vになるように2つのVRを調整する。

イメージ 6 EL34はEL84(6BQ5)の兄貴分みたいな出力管だろう。しっかりと鳴らす感じで大人の音がする。ややエコーがかかった感じに聞こえるのは化粧しているような印象で、素朴な感じからは外れる。他ブランドのEL34(6CA7)に交換すればもう少し好みの音を選べるかもしれないが、大事なのは音楽を楽しむことだ。そういえばじっくりと音楽を聴くことが最近少なくなった。 

(2018.5.1)

もう少し電流を増やしてEL34一本当たり80mA程度にした。歪み感が減ってだいぶ良くなった。しかし中高音は良いのだが低音が響いてこず、全体として線が細い。フルオーケストラの曲は音圧が物足りない。

EL34の定電流回路のトランジスタを変更してみた。下は交換前のもの。3W程度の損失に耐えられれば良いので中型のNPNトランジスタにしていた。(NECのロゴが今風なのできっとオリジナル品ではない。どこで買ったか忘れたがトランジスタ式DCアンプのドライブ段に使っていたもの)
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下が交換後のもの。これもDCアンプに使っていたもの。こっちは昔のNECのロゴなので本物っぽいが出どころは定かでないのでオリジナル品かどうかは疑わしい。たしか10年ほど前にバンコクの部品屋で手に入れたものだったか。DCアンプの出力段として結構良い音がしていたが、これまでに作ったトランジスタ式アンプはもうすべてばらしてしまった。こんなところに出番があるとは思ってもみなかった。さて結果だが、明らかに低音の伸びが出るようになった。力強くかつ繊細な音で悪くない。ゴリゴリと押してくるダイナミックさは無いが、ナチュラルな音は差動出力の良いところだろう。これでいろんな曲が楽しめる。(2018.5.17)
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